憲法統治の主要論点50 内閣総理大臣

明治憲法には、内閣総理大臣の規定はありませんでした。

これに対して、日本国憲法には「内閣総理大臣」の権能の定めが多く存します。

1 内閣総理大臣の地位
憲法67条は、内閣総理大臣は、国会議員の中から国会で指名するとされています。
次の①または②の場合には、衆議院の議決が優越します(67条2項)。
「?」は何が入りますか。

正解は、

① 衆議院と参議院で異なる指名となった場合に、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき
② 衆議院が指名の議決をした後、国会休会中の期間を除いて十日以内に、参議院が、指名の議決をしないとき

内閣総理大臣は、国会が指名し、天皇が任命します(6条1項)。
国務大臣は、内閣総理大臣が任命し(68条)、天皇が認証します(7条5号)。

2 内閣総理大臣の権能

憲法で、内閣総理大臣が主体となって行うとされる権能には上図のものがあります。
これ以外にも、内閣総理大臣が主語になっている憲法の規定には、法律・政令には、主任の国務大臣と内閣総理大臣が連署するとの74条の規定もあります。

内閣総理大臣の権限の範囲が問題となった判例が、ロッキード事件丸紅ルート事件です。

内閣総理大臣は、憲法上、行政各部を指揮監督するものとされています。
内閣法は、内閣総理大臣は、閣議にかけて決定した方針に基いて、行政各部を指揮監督すると定めています。
この点について、判例は、閣議にかけて決定した方針が存在しない場合でも、「少なくとも内閣の明示の意思に反しない限り、行政各部に対し、助言指導をする権限を有する」としました。これは、内閣総理大臣が運輸大臣に働きかけた行為が、賄賂罪における職務権限に属する行為かどうかに関する説示でした。

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