夫婦別姓 令和3年6月23日夫婦同姓合憲大法廷決定

令和3年6月23日、例外を認めない夫婦同姓婚制度の合憲性が争われた事件について、最高裁判所大法廷決定がなされました。

夫婦同性婚の合憲性については、平成27年最高裁大法廷判決が先例でした。結論として、今回の大法廷決定も、判例を踏襲しました。

平成27年最判では、国賠の事件でしたが、今回は、戸籍法122条による不服申立てというあまりなじみのない裁判手続に関する特別抗告審としての判断でした。

多数意見は、平成27年最判の「趣旨に徴し」、立法府の立法裁量の範囲を超えないとしたものです。憲法24条2項は、婚姻制度の在り方について立法事項としています。このように、憲法が立法事項としている事柄について、憲法上の問題が生じるものとしては、選挙制度(44条)、財産制度(29条2項)などがあります。選挙制度に関して、1票の格差が問題とされているように、憲法が立法事項としているからといって、立法裁量に際限が無い訳ではありません。

平成27年最判や本決定の多数意見は、補足意見で敷衍されているように、婚姻制度の在り方については、民主的プロセスにおいて議論されることがふさわしい問題であるとしました。

選挙無効訴訟における違憲審査とのスタンスの違いは、民主制の過程にかかわる問題であるか否か、という二重の基準の発想に起因するものがあるかもしれません。

違憲や反対意見における違憲判断の理由は、上記の通りです。
違憲判断の枠組みとしては、例外を認めない夫婦同性婚制度が、24条1項の保障する婚姻の自由に対する制約にあたり、それが、合理的な制約であるかどうかという形です。

法律制定当時においては、家族の一体性などの目的に合理性があったものの、時代の変化により、家族の在り方が多様になってきていることから、現時点においては、合理的理由が失われて、かえって、姓の変更によるアイデンティティの喪失等の不合理性が浮き彫りになってきている、というのが反対意見の骨子です。

1名の裁判官は、夫婦同性婚制度は違憲であるが、抗告は棄却するとの結論を採っています。その理由は、夫婦同性婚制度が違憲であるとしても、夫婦別姓の届出を受理する法律の制定は、立法府の権限であり、司法には、夫婦別姓制度を創設するような権限がないから、結論としては、抗告を棄却するほか無いという判断です。

これに対して反対意見では、民法750条や戸籍法74条1項が無効となる以上、届出の記載事項は、すべて記載されているということができるので、届出を受理できるという戸籍法の解釈論を論じています。特に、夫婦別姓の届出を認めてしまうと、戸籍制度や、子供が生まれた場合の性がどうなるのかなど、重要な法律の穴が生まれてしまいます。このことをどのように考えるかが、夫婦同性婚制度が違憲であるとの判断で一致しながら、反対意見と1名の意見とで結論が異なる理由です。

これはいわゆる、違憲判断の後始末の問題とよばれるもので、同様の問題は、国籍法違憲判決においても、準正要件が違憲であるとしても、国籍を付与してよいのかどうかという形で問題となりました。

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