憲法統治の主要論点50 国会議員の特権

憲法50条及び51条は、国会議員の特権として、不逮捕特権と発言等の免責特権について規定しています。

不逮捕特権は、短答試験必須の知識です。国務大臣に対する訴追について内閣総理大臣の同意を要すると定める憲法75条の規定との対比で要件効果を覚えましょう。

発言の免責特権については、札幌病院長自殺事件が基本判例となります。

論文式試験で、人権規定に関する論点にからめてこのような観点からの評価を問う出題も想定されます。

札幌病院長自殺事件は、国会審議(委員会)における議員の発言が個人の名誉を毀損したとして国家賠償を求めた事案です。国会議員の職務行為が違法となる場合の要件は、昭和60年の在宅投票制度廃止事件判決による立法行為が違法となる場合の要件との関連で論じられています。

まず、立法行為や立法不作為が違法と評価される場合

在宅投票制度廃止事件の「容易に想定し難い場合」は、在外日本人選挙権訴訟では、トーンが変わり「例外的な場合」とされました。

これを踏まえて、立法過程の質疑等が違法となる場合を判断したのが、札幌病院長自殺事件です。

point

まず、国家賠償法上、議員の職務行為を違法と評価することと憲法51条の関係が問題となりますが、議員個人の賠償責任を追及するのでないからよいと解されています。国家賠償請求が憲法17条で保障されているということも、根拠となりえます。

在宅投票制度廃止事件において最高裁が説示するとおり、立法行為が国家賠償法上違法となるのはどのような場合については、国会議員は全国民の代表として、特定の個人に法的責任を負うものではなく、議会民主制のもと政治責任に委ねられるべきであり、司法による法的評価になじまないという視点が重要です。

札幌病院長自殺事件において、最高裁は、国会審議における質疑等も、具体的事例を交えた質疑がなされる場合には国民の権利に直接関わる場合があるものの、「国民の間に存する多元的な意見及び諸々の利益を反映させるべく、あらゆる面から質疑等を尽くすことも国会議員の職務ないし使命に属するものであるから、質疑等においてどのような問題を取り上げ、どのような形でこれを行うかは、国会議員の政治的判断を含む広範な裁量にゆだねられている事柄とみるべき」としています。

ただし、このような広範な裁量権は、職務を全うするためのものである以上、「職務とは無関係に個別の国民の権利を侵害することを目的とするような行為が許されないことはもちろんであり、また、あえて虚偽の事実を摘示して個別の国民の名誉を毀損するような行為は、国会議員の裁量に属する正当な職務行為とはいえないというべきである。」と判示しています。

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